「暗殺教室」世の中の仕組みをわかりやすく解説してくれる。
自分よりも格下の存在を意識させることで「普通」以上を服従させる仕組みは何も物語りの中だけじゃないのである。
10個パンを持ってる人がいる。
5個を1個づつ側近の部下5人に渡す。
側近の部下は自分の配下達にに半分を渡す。
配下達はまた半分を自分の手下に渡す。
そんな風に下へ下へと階層をつくると、下はすぐ上にだけ憎悪を向けるが、パンを自分の分として5個持っている奴に気づかない。その5個持ってる奴は、ときどき弱いものの味方のように、1つのパンを放り投げる。
私はその仕組み、ある程度は許容できるとは思っている。10個パンを持つ人にも責任があるわけだし。だが度を過ぎるとはっきりいって「悪」だ。
「ああはなりたくないだろう?だからエンドのE組にならないようにな」
エンドのE組とは、漫画『暗殺教室』の舞台となっている《椚ヶ丘中学校3年E組》のことである。全体の95%に優越感と緊張感を出させるために設定された学校が決めた落ちこぼれを集めたクラスを言う。進学校の学校方針。とりあえず、成功しているようだ。それをぶっ壊すのは、地球なんて簡単に潰せてしまう、タコの外見の異星人「殺センセー」(月は7割ぶっ潰し済)。そして殺センセーは、来年の3月までに自分を殺せないと地球も潰すと宣告、それまで3年E組の先生になることを希望した。その関係で、E組に「殺センセー」暗殺依頼が政府から出されることに。
この漫画でも、格下のE組に「いちばんしんどい仕事」が回される。
ところが、殺センセーや烏間先生、イリーナ先生など、直接E組と接する側は、彼らをきちんと導く。現実と違うよなー的な気分にもなるけど、子供が頑張り、オトナがかっこいいと漫画は面白くなるから別にいいのである。
ちなみに、人気がでた漫画で際どい表現がそこそこあれば、賛否両論あるもんだが、この漫画、否がわりと少ないらしい。特に殺センセーの教育っぷりは、この漫画にクレームがつきにくいほどに常識的なところもあったりする(これは意図されたものらしい@wikipedia)。
風刺画というジャンルがある。
http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/4039783.html
やりすぎて弾圧されてしまった作品もあっただろうに、だが多くの作品が後世にも残り、未だ現代を題材に新しいものが産み出されている。「暗殺教室」は愛すべきほどくだらないネタがたくさんあるコメディだが、中身は世の中の仕組みをわかりやすく解説してくれている。尖った表現もできる作風に思えるが、うまく笑いにくるんでるところに、風刺というジャンルを重ね合わせてしまう。
最後に風刺の意味を辞書で再確認。
世界大百科事典 第2版の解説
ふうし【風刺】
人間の愚かさや誤りを痛烈に指摘して正す一手段で,主として言葉を用いるが,絵画,音楽,舞踏やジェスチャーなどによる場合もある。単なる非難,批判と違って,直接的ではなく間接的に,皮肉やユーモアの衣をかぶせて目的をより効果的に達することが多い。英語,フランス語ではsatire,その語源はラテン語のsatira(satura)であるが,これがどのような起源から生まれたものであるかについてはまだ定説がない。かつてはギリシア神話の中に出てくるサテュロス(好色でいたずら好きな半人半獣の森の神)が起源であると考えられた。
作者さんのアンサイクロペディア。(←エントリーの趣旨の都合、こっちにします)
http://ja.uncyclopedia.info/wiki/松井優征
(追記)
作家さんのwikiの方に、風刺漫画を取り入れてるという内容が書かれていてびっくりしました。エントリアップ後に発見。