水がある限り金魚は泳ぐ

本と読書と映画とドラマ、そして雑文。

「根の深い木」もしも最寄り駅の看板が読めなかったら

 2011年から2012年に韓国で放送されたドラマ「 根の深い木」。登場人物の魅力が左右するドラマとは一線を画すハングル文字創製というテーマに人物が交錯するドラマだと思う。 ハングル文字は表音文字。子音と母音の組み合わせなので、1日でも覚えることは可能。物語は民が文字を読めるようになることで社会がどう変わるかについても言及される。興味深い論戦である。

 またハラハラドキドキ要素も満載。敵対勢力がぶつかり合うシーンに、敵側の殺人マシーン的刺客がボスを助けるために走り出す。これはヤバいと思ったところに、主人公が状況に気づき、そこへ向かう。膠着状態を打破するために、ヒロインが勇気を振り絞る。てな具合で、とにかくおもしろいのだな。

 

  

 そんなこんなで、ドラマを楽しんだ後はいつもの日常が来る。

 大阪駅はグランフロント大阪|GRAND FRONT OSAKAで沸き立ち、案内看板が増えた。大きな矢印と大きな字で書かれているからこの駅に不慣れな方もわかりやすいだろうなあ〜と思う。エスカレーターにのっかてると、降りる寸前に次の目的地に誘う看板がある。改札口の方を向くと、複数のホームがどこへ向かうのか、記された案内板が天井からぶら下がってる。当り前の景色なんだけど、「根の深い木」を観てたらちょっと感慨深くなった。

 

「ああ、私は行きたいところへ行けるんだなあ」

 

 通勤だと道を覚えているから、看板を観ることは少ない。でも旅先では違う。看板に導かれ、目的地に向かう。海外旅行では事前に少しでもと勉強した拙い語彙を駆使して何度も駅の看板を読んだ。

 

 もし最寄り駅の看板も読めなかったら。そんなことを仮定してしまった。読める人に聞くしか手がなくて、状況によってはどこにも行けずに立ち止まってしまったかもしれない。なんだかわからないものが書かれた色とりどりの路線図の看板を見上げながら。