水がある限り金魚は泳ぐ

本と読書と映画とドラマ、そして雑文。

「模倣の殺意」は得した気分になれる作品。

 被害者の名前から推測できることは多い。いや、登場人物の名前からも。海外ドラマの吹き替えを聞いていると、大物声優さんぽければ、何かに関わっているとみて大方間違いない。

 登場人物が多くバラバラに動いているから、性格が際立っている。その性格のピースを重ね合わせると被害者加害者の指数ができる。オチの話題が大きく、取り上げられることも少ないと予想するが、この物語は、父と子どもの物語でもある。

 

 最近書かれた作品ではないので、伊坂幸太郎を読んだ後の読書になってしまったこともあり、なんとまあ、伊坂氏のあの独特の修辞の対極のようで興味深かった。なんぜ、文章や言葉の選び方がシンプル。過多な修辞が少なくストレートに情景が浮かんでくる。伊坂氏も情景が浮かびやすいのは、周知のことだが、中町氏の文体は何か忘れてしまった大切なものを思い出すように読んでしまっていた気づく。オチだけを楽しむなら他の作品でできるが、少し前の時代の言葉づかいのキレイさも味わえるからなんだか得した気分になった。

 目に浮かぶように犯人が殺意を抱き、被害者に近づいている様が想像できる。そんな作品である。