水がある限り金魚は泳ぐ

本と読書と映画とドラマ、そして雑文。

がんばっていると報告できることが嬉しいよ。

今週のお題「私のお父さん」

 実家に行ったとき、父が、突然聞いてきた。

「おまえまだ、あそこの仕事してるんか?」

 あそことは、父が昔、仕事をしていたらしい大手の企業である。父と私の職種は違い、正確には、あそこ、は、私の取引先と同じではない。だが、答えはイエスだった。

 父が病気のとき、その取引先の最寄り駅から体調を聞こうと電話したことが数度ある。そのとき、病気にもかかわらず、父は饒舌になった。

 ちなみに父は私の仕事をよく知っている。

 理由は簡単だ。

 彼が親だからだ。

 その仕事についた子供のバックグラウンドを長くみてきたからだ。ならば、私が父と違う仕事で、取引先も微妙に違うことも理解できないはずはない。

 それでも彼には子供が自分と同じ取引先で仕事していると思っているのだ。長い時を経て、彼が働いていたことに関わる子供に何かを感じているのだ。

 ごめん、お父さん。何を感じているのか、私にはわからない。

 想像はできるけどさ。きれい事の部分もきれい事じゃない部分も。たぶん、あたっていると思うんだ。でも、そんなことはどうでもいい。

「うん、いい仕事させてもらってるよ」

 そう報告できることが、ただ、嬉しい。