黒く染まりゆく路上に戦慄する。
昔見たテレビ番組の局アナが街をレポートする企画である。道を歩く人のマナーの悪さを警告するものだった。ベテランの局アナが、ゆっくりと足下を見ながら歩いていた。ドス黒く染まった道路は血痕のように丸く重なりあっている。
黒い黒い黒い黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒。
「ぎゃあああああああ!」
誰が叫んでいるのかわからないが(サラッというか?)、叫び声が聞こえてきそうなくらい黒い道路だった。吐き捨てられたガムが重なってアスファルトを覆い隠そうとしているのだ。誰かわからない老若男女が、ぺぺぺとガムを吐き捨てて出来上がったのだろう。風雪を経て、ゴミとタバコに塗れ、踏みつけられて重なるガムは本当に血痕のようだ。
「ぎゃあああああああ!」(しつこい)
そして、今も。足下をみると。
路上には黒くて丸い血痕のような汚れが、消えることなく存在する。惨劇の予感に身震いする思いである。これは、何かの予兆だ。数年後には・・・。
「ぎゃあああああああ!」(しつこいしつこい)
ガムは紙にくるんで、ゴミ箱に捨てるのだよ。